• Teruki Hara

セミナーリポート 「コト」「トキ」価値創造への経営モデルへの転換

最終更新: 2018年1月27日



・なぜ、「コト」「トキ」価値創造なのか?その根源を知る。


昨今、「コト消費」と云う言葉が、よく云われる。長期に渡って経済低迷が続き、デフレ脱却もままならない状況で消費者が中々モノ(財・サービス)を買ってくれない。そうなれば景気循環の中で設備投資や耐久消費財の売れ行きも鈍る。

しかしながら今の日本・・・GDP500兆を超え、個人金融資産が1800兆もある国でモノが売れない!と云う現象は様々な要素が絡み合った結果かと考えられるが、その要素の一つが消費者の「買うモノが無い・ほしいモノが無い!」と言うマインドが恒常化してしまったのでは無いか?と言うのがこのテーマの前提だ。

確かに普通の家庭なら必要なモノは何でもある。特にこれが!と言ったモノは無い!

そんな中での競争要素はどうしても「価格」と云う事になり、供給側が熾烈な価格競争を繰り広げる。

それが今の日本の消費市場の現状だ。実はこれは日本だけでは無い、欧米でも同じ現象が起きている。普通そういう時は経済新興国の消費が急激に伸びて輸出が伸びるものだが、最大の牽引国の中国が急速に同じような成熟に入りつつあり、その他の新興国も期待された程の成長は無い、エネルギーや環境への課題が大きな原因だ!

産業材に至っては、ITをはじめとする技術進化の速度が速く、あらゆる製品の汎用品化への速度が早く、同じような価格競争をもっと激しく世界中で争っている。

そんな世界的な環境の中で、マーケティングの世界で新しく提唱されたのがS.D.L(サービス・ドミナント・ロジック)だ。

日本語に無理矢理訳すと、「サービスでの成長の理屈」と言う事になるのか・・・提唱者はアメリカのマーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴのお二人、2004年に発表された・・・

ここで学者提唱の難しい話をするつもりは無い。そもそも学者とはまったく新しい事を打ち出す方々では無い、社会に起こる現象を調べ分析し、それをまとめて「名前」を付ける。マーケティング学者はそう云う仕事。

つまり市場で起きている現象の中で注目される要素を一つの「ロジック」として提唱された・・・既に市場で起こって居る事をまとめ上げた理屈と考えて頂きたい。

当方がこの言葉に初めて触れたのは2015年くらいのマーケティング学会のあるセミナー。既に提唱されてから10年以上が過ぎている事になるが、「すべてのビジネスはサービス業だ!」的な言葉が先行して・・・言ってる気持ちは解るが「で、それで?」と言う感想しかなかった。

確かに日本でも製造業からサービス業への転換が進み、サービス業との融合とかは言われていたが・・・

正直、実態の商売の現場から見て現実的な実感は湧かなかった。マーケティングの世界でよく有る「言葉」遊びの一つかと思っていた。

しかしながら、実際にクライアントと進めるプロジェクトなんかと、このロジックは同じでは無いか?と思うような事を幾度とあり、これはひょっとしたら非常に重要な考え方では無いか?プロジェクトの中で様々な試行錯誤を繰り返して居る事に対して一定のまとめた考え方では無いかと思い、様々に調べ、落とし込みを行った結果、当方は非常に効果的で画期的なマーケティング手法で、この考え方(メタ・コンセプトと云っても良い)は、多くの企業の課題を解決する手法に成ると確信いた訳です。

ただ・・・S.D.L(サービス・ドミナント・ロジック)・・・なんて言い方は、ややこしい!

当方はそれを・・・「コト」「トキ」価値創造と、言い換えさせている。

折しも「コト消費」と云う言葉が、ビジネス誌なんかによく登場してきたのも在るが・・・

多くの場合、その解釈は間違っている。

例えば「コト消費」を導入すると云って、百貨店さんなんかがサービス商品(エステだの、マッサージだの)を売り場に設けるなんてニュースが流れたが、まったくの間違いで「ちがうダロー!」と叫びたくなる。

S.D.Lで言う「コト消費」とは、モノを提供(売る)事によって、そのモノで顧客が何か「コト」を生み出す事なのです。

例えば、お酒・・・日本酒の話をします。日本酒厳しい業界で、特に若い方のお酒離れもあって長期に渡って市場縮小が起きている業界です。そんな中で山口県の旭酒造さんが「獺祭」というお酒を出された、二割三分と言う超大吟醸でフルーティーな味が特徴。味の評価はさて置き、そのお酒を売るにあたってワイングラスで飲むスタイルや、フランス料理一緒に飲むスタイル、業界ではタブーな氷を入れてオンザロックでの飲み方等の提案を行い、今まで日本酒を飲まなかった女性層に支持された。今やフランスでお店を開くまで至っている。

大事なのは飲むスタイルを顧客に提案し、そのプロモーションを行った事と、それが顧客に浸透していった事。

モノから生まれる顧客の事だ。

これをS.D.Lでは、「顧客の状態」をつくると云う。

考えれば、同じような事は、これまで様々な企業で実施されているが、考え方をまとめたモノはなかった。

まず「コト」「トキ」価値創造のポイントは「顧客の状態」をつくるという事

次のポイントは価値=利益をどこで生まれるか?これがやや難しい。

「コト」「トキ」価値創造では、価値=利益は顧客のトコロでした生まれないという考え方です。確かに価値とは顧客が認め、交換・・・つまり買って頂いてこそ価値であると云うのはマーケティング本来の考えです。

それを踏み込み顧客が「コト」「トキ」を創造してこそモノの価値が生まれると言う事です。

経済学ではマルクスやスミスが言った「労働価値」でモノに価値が内在しているのが基本ですが、それは一旦こっちへ置いといて頂き、「コト」「トキ」価値創造は顧客の「コト」「トキ」が起きてこそ・・・が次なるポイントです。

先に記した様に今はモノに対する欲求が低い、その欲求を喚起して高い価値を創る為には顧客の「コト」「トキ」を起こしてこです。

それで考えますとモノの供給者は価値を提供する事が出来ない!となります。

次なるポイントは「企業(モノを提供する)は価値を伝達する事が出来ないが、価値を提案する事が出来る」です。

先の日本酒「獺祭」の事例そのものです。

究極のフルーティーな味の日本酒でも、ワイングラスフレンチで味わうと言った「顧客の状態」を提案し、その状態を価値と認めて頂いた時に「コト」「トキ」価値創造が成し得る。

この「顧客の状態」への提案力がポイントです。

あえて言えばモノを売るのでは無く、状態を提供する!です。

S.D.Lでは、「使用価値」「経験価値」「文脈価値=意味価値」です。

これまでは消費=消費財のお話でしたが、産業財はどうなのか?」ですが、

「コト」「トキ」価値創造では、消費財より産業材の方が組み立てやすいのです。消費は気まぐれです。顧客によって受け取るイメージはバラバラですが、産業財は概ね定性的・定量的かつ合理的に「顧客の状態」を提案する事が出来ます。例えば「品質アップ」や「コストダウン」「効率化」等、客観的に「顧客の状態」が提案できます。いわゆるソリューション提案と云われるものですね。

工業用センサー等のキーエンスさんなどは、その究極で高収益企業の代表格です。

故に、「コト」「トキ」価値創造はB2B向きとも言えます。

さて、最後のポイント、価値は企業1社では提供できない、そのネットワークが必要だ!と言う事です。

単純に考えて頂ければ解るのですが「顧客の状態」を提案するにも、自社のモノだけでは成立しないことです。

日本酒にワイングラスくらいなら何とかなるとしても、それを置くテーブル・その空間の演出等深く掘り下げれば、とてもじゃ無いですが1社の企業が用意は出来ません。

※もちろん用意をしてしまう・・・と言ったビジネスモデルを創る可能性もありですが・・・

他の企業が提供するモノも含めた提案を行う、暗黙のネットワークが存在する事です。具体的に業務提供をする方法もあります。要は如何に価値ある「顧客の状態」を提案できるか?です。

この様に「コト」「トキ」価値創造は、「顧客の状態」の提案と云う意味では、様々な方法が考えられますが、まずはモノ主義からの脱却と、それを超える価値創造と云う意味で可能性は無限です。

簡単な考え方では無いですが、成熟した市場では唯一の収益機会を得られる画期的な考え方だと思います。

ひとつひとつはこれまで概念にありましたが、まとめ方インテーグレートロジックとしては革新的です。

今、経営に組み込むべき手法だと確信します。

次回は、「コト」「トキ」価値創造におけるモノ・・・商品について掘り下げていきたいと思います。


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